ドローンで変わる未来の物流とは

最近テレビやニュースでもよく取り上げられるドローン。一度は聞かれたことがある方が多いと思いますが、まだまだ実物を見たことがないという方も多いのではないでしょうか。日本国内でも徐々に法整備が進められ、ANA(全日本空輸株式会社)などを中心に様々な実証実験が行われており、今後ますます実用化が進んでいくと思われますが、今回のコラムではそんなドローンについて取り上げてみたいと思います。

さて、そもそもドローンとは何でしょうか。プロペラが複数ついている機体、空を並行飛行する機体、色々な捉え方がありますが、国土交通省などのホームページによれは小型無人機という表現が多く見られます。「無人で空を飛べる小型航空機」という定義が最も適切かもしれません。

ドローンが声高に叫ばれ出したのは2015年頃ですが、その発端は、元航空自衛隊隊員の男性が総理大臣官邸にドローンを飛ばし、落下させた事件と言えるでしょう。多くのメディアで取り上げられることとなりましたが、当時はドローン飛行に関する法規制もほとんど無く、この事件を契機として法整備の必要性が認識されることとなりました。

また、この事件から約半年後の11月に安倍首相自らが「早ければ三年以内にドローンを使った荷物配送を可能にする」と述べ、2017年5月には「空の産業革命に向けたロードマップ」が作成されることとなり、経済産業省や国土交通省を中心にドローンを活用した物流事業の構築が積極的に支援され始めました。

2020年現在はまだ実証実験の段階に留まっていますが、二点間距離にしておよそ数kmを結ぶ比較的短距離のものから、距離の長いものでは数100kmを結ぶ比較的広範囲な物流網の構築など、様々な取り組みが行われています。

特に、本コラム冒頭で取り上げたANAは長崎県五島市(いわゆる五島列島)で過疎地域における物流網の構築を実験的に行っており、およそ10km離れている離島へドローンを飛ばし、食料品などを無事に届けることができるのかなど様々なテスト飛行を行っています。

ANAが実施している一連の実験で非常に価値があると思われる点は、ドローンを遠隔操作している操縦者はドローンが実際に飛行しているエリアから遠く離れたところにいる、という点ではないでしょうか。実際には羽田空港から遠隔操作されているのですが、東京-長崎間の距離はおよそ1,000kmもあることを考えると、この実証実験の新規性を理解して頂けるものと思います。

物流業界においてドローンとその発展がどのような未来をもたらすかという観点では、ドローンを活用した配送が日常的になれば過疎地域における利便性が格段に高まると言えるでしょう。先ほど取り上げたANAの実証実験のケースでは、現状、五島列島の1つの島に住んでいる住人が何かモノを取り寄せようとすると一日2回しかない定期便に乗って商店のある別の島へわざわざ出向かなければならないという事情がありますが、注文した商品がドローンで配送されるのであればわざわざそのような労力をかける必要が無くなります。

インターネットの発展とともに、たとえ都会にいなくても多くの情報が手に入るようになりつつありますが、ドローンとドローンがもたらす物流の発展により、たとえ都会にいなくても多くのモノが手に入るような世界が実現されることでしょう。最近のコロナ禍において地方の可能性が改めて見直されていますが、この傾向が今後も続くとすると、東京一極化という流れが止まるとともに私たち日本人が多く持つ価値観も変わり、そういった意味ではやがてパラダイムシフトが起こるかもしれません。このような変革の時代に物流業界に携われることに喜びを感じるとともに、我々も遠く離れたお客様一人ひとりの笑顔を大切に、事業を行って参りたいと思います。