安全に繋がる3S活動や改善活動

前回のコラムでは、制度・教育面の充実化という観点から、今すぐにでも取り組める施策の一つとして、安全運転講習の受講について紹介させて頂きました。ドライブレコーダーの設置や安全運転講習など、ドライバーの方を対象として安全運転を実践するにはどうすれば良いかご説明して参りましたが、安全を意識するべきは一般道路を走行中に限るというわけではありません。倉庫内での荷役や、卸地からの搬出・搬入時など、他にも安全を意識したオペレーションが必要とされるシーンが多岐にわたるというのも物流業界の特徴ではないでしょうか。

主に、制度面を充実化させることにも繋がりますが、社内にいわゆる3S(整理・整頓・清掃)の意識を根付かせたり、改善活動を社員一人一人が主体的に実践できるような社風を築くということも長期的な観点で安全を実現するには非常に有効と考えられます。

例えば、倉庫内が雑然としているような場合、フォークリフトの走行ルートに作業員が入り込むことで接触事故を起こしたり、平積みされた積荷が整理されていない場合、積荷や施設内の設備と車両が接触事故を起こすなどといった事例が発生してしまう可能性があると言えるでしょう。

では、これらの事故を防ぐためにどのような打ち手が考えられるでしょうか。色々な施策が考えられますが、まず簡単なものとしては、床にラインテープを綺麗に貼り、それぞれの走行ルートや、積荷の置き場をはっきりと「見える化」させる方法があげられます。そして、この方法がもたらすメリットは安全の実現化だけではありません。既存のルートや置き場を見直すことにも繋がるため、業務オペレーションを効率化させ、経営状況を改善することも不可能ではありません。多くの事業所様ではすでに取り組まれているかもしれませんが、業務オペレーションを効率化させるという観点でも今一度社内を見直されるとよいかもしれません。

また、この「見える化」という考え方は、事故の再発を防止するために非常に重要な考え方であると言えるでしょう。事故が発生すると通常はその事実から目をそらしたくなりますが、その事故が発生した原因を究明し、再発防止策を考え、社内でしっかり共有するということが何よりも効果を発揮すると言えるのではないでしょうか。

そして、事故が発生した後になって初めて対応するというのではなく、事故がそもそも発生しないように日頃からどのような改善ができるのか、社員一人一人が考えることも重要と思います。有効な改善案を社員が提出すると、その改善案がもたらす効果がある程度金額評価され、その一部が奨励金として社員に還元されるという取り組みを行っている企業も中にはありますが、社員が改善を行うモチベーションを高めるために社内制度として表彰制度などを取り入れるなど、様々な取り組み事例が考えられます。

ハード面で安全を実現しようとすると、ドライブレコーダーを導入するなど多額のコストがかかってしまうのも事実です。一方、社内制度としてソフト面を充実化させる方法においては、コストを抑えつつ、社員全員の安全意識を向上させることができると言えるでしょう。もちろん、その分時間がかかってしまうのも事実ですが、ローマは一日にしてならずという諺もある通り、本当に価値のある施策は一朝一夕で実現できるものではありません。企業の存続という観点で経営の屋台骨とも言える安全について、長期的な観点で実践されることをお勧めしたいと思います。