前回のコラムでTPPについて概略を説明しましたが、さらに少し踏み込んでみたいと思います。TPPの主要な目的は取引国間の関税の撤廃・大幅低減でしたが、全ての品目について当てはまるわけではありません。
特に農産業は一次産業として重要な側面を持ち、国力の維持という観点からも一定の保護が必要であるということや、現在の政府与党である自民党がその支持基盤の一つである農協に最大限の配慮をしたということもあり、「コメ」、「麦」、「牛・豚肉」、「乳製品」、「砂糖」の5項目について「重要5項目」と指定され、保護対象となりました。
ただ、必ずしも100%保護されたわけではなく、比較的大きな影響があると思われる部分もあります。コメに関してはオーストラリアからの輸入枠に関して無関税輸入枠が設定されましたし、先の話になりますが、10年目以降豚肉(低価格品)の関税はキロあたり482円から50円に変更、16年目以降牛肉の関税は38.5%から9%に変更となりました。現状でも海外産の牛肉、豚肉は安価なものが多いですが、今後さらに安価になることが想定されます。日本の畜産業者は価格という観点では海外産の牛肉・豚肉に太刀打ちできなくなると思われるため、高品質を武器にブランド戦略を構築することが今以上に求められるのではないでしょうか。
輸入という側面では以上のような影響を受けると思われますが、輸出という観点でプラス材料もあります。特にカナダ向けでは5年目以降乗用車について、6年目以降牛肉について関税が完全に撤廃されることとなりました。それぞれ現状では6.1%、26.5%の関税が課されていますが、様々な品目について今後カナダ向け輸出が活発になることが想定されます。また、近年経済成長が著しく富裕層が台頭しつつあるベトナム向けにブリやサバなどが輸出される際の関税が即時撤廃されることとなりました。
このように、品目ごとに課される関税率が必ずしも一様に変化するわけではないので注意が必要ですが、特に関税率が大幅に変化する品目は市場シェアが大きく変化する可能性があります。また、各個別の品目について輸入量、輸出量はそれぞれ変化すると思われますが、一つだけ断言できるとすれば、その総量としては明らかに増大することとなるでしょう。海上コンテナ輸送事業を営んでいる当社としましても、拡大する市場ニーズに応えられるようサービス展開をして参りたいと思います。