アメリカとの関税交渉ついにまとまる

今年2月のコラム「トランプ政権と海上コンテナ」と書いていましたが、約半年間の協議を経て、ついに日米が合意に達したということが先週末ニュースで取り上げられていました。

交渉の具体的な内容全てはまだ明らかにされていませんが、日本政府が主体的にアメリカに対して投資を実行する見返りに、日本の基幹産業である自動車および自動車部品の対アメリカに対する関税税率がもっとも低い15%となるということが大きく発表されています。

また、日本が譲歩したその他の具体的な内容としては、
・アメリカ産のコメの輸入を75%拡大する
・農産品(大豆やトウモロコシなども含む)を1兆円分購入する
・ボーイング社の商用飛行機を100機購入する

などがあるようです。

少し具体的に見ていきましょう。

当初は自動車および自動車部品の関税が25パーセントもしくはそれ以上となる見込みであったため、15%という数字は日本がかなりその他の側面で譲歩をし、もぎ取った成果であると言えるでしょう。

実際のところ、アメリカの隣国であるカナダやメキシコからの輸出にかかる関税は自動車に限っていえば現時点で25%が設定されており、カナダやメキシコに生産拠点を移していたアメリカ企業からは懸念の声が上がっているようです。

ただ、トヨタ自動車はカナダやメキシコに生産工場を抱えていますし、日産自動車もメキシコに工場を保有しています。物流にかかるコストなども考えると、日本-アメリカ間では海を越えなければならないこともあり、必ずしも日本企業が有利になるかというとそこまでの差がないとも思われます。

一方のコメや農産品の輸入増加やボーイング社の飛行機購入についてはどうでしょうか。

現在日本国内はコメ不足の状況ですが、実は今年度(2025年度)の生産量は前年度から40万トン増の719万トンと予想されています。コメ不足の影響を受け、今年に入ってから増産をする農家も増えており、新米が流通する8月、9月以降はコメが市場に出回ってくることが予想されますが、アメリカ産のコメも今回の合意に合わせて市場に流入してくることを考えると、今年後半からコメが余る状況が出てくるかもしれません。

マイナス側面を想定しておくと、せっかく増産に励んだ農家に方にとっては値崩れが起き、想定内の収入が得られなくなる可能性も考えられます。
大豆やトウモロコシの生産農家にとっても、当然流入量が増えれば価格が下がる可能性があるため、今回の合意内容がどのような影響をもたらすかは注視が必要だと思われます。

一方、民間航空機に限って言えば、元々日本国内に生産者がいない(厳密にいえば三菱重工などが該当しますが現時点では生産能力がないと言えます)ため、日本企業が直ちに影響を受けることは少ないと言えるでしょう。

一方で、ボーイング社はいくつかの墜落事故を経て経営危機に陥っており、その経営危機を救うために日本政府が使われているという見方もできるでしょう。
この関税交渉の結果、万が一購入した(させられたと言ってしまっても過言ではありません)航空機が墜落事故などを起こしてしまえば元も子もありません。
こちらも消費者の観点で批判的な目で注視し続けることが大切だと言えましょう。

大局的に見ると、日本政府が自動車産業を何としても守ろうとした結果、農産業を捨てたという見方をする人もいらっしゃるかもしれません。今回の交渉結果が長い目で見た時に日本の産業にどのような影響をもたらすかを正確に予想することはできませんが、現時点であらゆる可能性を考えておくことが未来を生き抜くことにつながると思います。