前回のコラムでTPPについて概略を説明しましたが、今回はEPAについて取り上げます。そもそもEPAとは何か、なぜ今EPAなのかについてご説明したいと思います。
EPAとは、Economics Partnership Agreementの略ですが、”Economics”は「経済」という意味、”Partnership”は「パートナーシップや連携」と意味、”Agreement”は「協定」という意味であり、日本語では「経済連携協定」と呼ばれます。
よく似た略語にFTAというものがありますが、FTAはFree Trade Agreementの略であり、いわゆる「自由貿易協定」と呼ばれます。EPAとFTAの違いは、EPAはFTAをより拡張した概念であるということができ、EPAは単なる貿易の自由化(関税撤廃によるモノの移動の自由化)だけでなく、人材(ヒト)や投資(カネ)の移動自由化を促進することを狙いとしています。
そしてこのEPAがつい先日、日本と欧州連合(EU)間に2月1日に発効されました。このインパクトを数値化すると、日本とEUのGDPを合計すると世界の30%程度となり、まさに世界経済の3割近くを占める自由経済圏が誕生したということができます。
マクロ経済的な概要はさておき、具体的に私たちの実生活に近い部分でどのようなインパクトがあるのか見てみましょう。ヨーロッパからの輸入といえばワインが有名ですが、今回のEPA発効によって、酒類は全てにおいて関税が撤廃されます。現状でもヨーロッパ産のワイン(1本分)には数10円から数100円の関税しかかかっていませんが、さらに安価に手に入れることが可能となります。
一方、ヨーロッパへの輸出を見てみると、例えば、日本産工業製品がEUに輸出される際の関税が100%撤廃されます。これは、自動車(完成車)においても例外ではなく、今から8年後と少し時間がかかりますが、現状10%も課されている自動車の関税が撤廃されます。また、自動車部品や工業製品、電気機器といった製品の90%以上の関税が即時に撤廃されます。
EU経済圏に向けて輸出量が増大することは日本の産業界にとってプラスとなりますが、とりわけ日本の大動脈である自動車産業は裾野が広く、その景気動向は多くの中小企業に影響を与えます。日本の経済産業省によればEPAがもたらす経済効果は約5兆円と試算されており、これにより国内で約30万人もの雇用が増加すると言われています。
アメリカと中国を筆頭に世界のブロック経済化が進展しつつある中で、日本はその流れに逆行するかのように自由貿易を推し進めていますが、中長期的な経済効果を考えるならば明らかに日本にとって利があるものと言えるのではないでしょうか。なぜなら自由な市場には競争が存在し、競争はすなわち成長をもたらすからです。
今回のEPA発効によって日本とヨーロッパ間の貿易は原則自由貿易となり、輸出・輸入の両面で市場が拡大することとなるでしょう。当然のごとく日本国内における海上コンテナ輸送・トラック輸送のニーズも増大すると思われますが、当社も成長を止めることなく、拡大する物流ニーズに応え続けたいと思います。