海上保険について

前回のコラムで陸上輸送と海上輸送の違いやそれぞれのメリット、デメリットについてご説明しました。今回は少し踏み込んで、保険についてまとめたいと思います。

上記の輸送形態に準じ、保険は大きく2つの種類に分類されます。陸上輸送を対象とする「運送保険」、海上輸送を対象とする「海上保険」です。「海上保険」はさらに大きく2つに分類され、日本と海外の間で輸送される貨物を対象とする「外航貨物海上保険」、日本国内で輸送される貨物を対象とする「内航貨物海上保険」に分けられます。

たとえば、海外から商品をコンテナで輸入し、さらに日本国内で輸送をする場合に契約すべき保険は「外航貨物海上保険」と「運送保険」ということになります。

ここでは、「外航貨物海上保険」について少し踏み込んでご説明したいと思います。
多くの保険会社によって様々な「外航貨物海上保険」が提供されていますが、実は基本的な条件(各種の危険において保険金の支払い内容を定義するもの)はおおよそ共通しています。

といいますのも、イギリスの保険市場で国際的な約款が1963年に制定されて以降、ICC(Institute Cargo Clauses)という協会貨物約款が国際的な標準約款となっているからです。現在では、2009年に作成されたICC(2009)が基本約款として各保険会社で採用されていることが多く、その場合、AからCの3タイプ(ICC(A)、ICC(B)、ICC(C))が基本条件となっています。

具体的に補足すると、ほぼ全ての危険(火災・爆発や地震・噴火、盗難など)が補償されるAタイプ、一部の危険(盗難など)が補償されないBタイプ、基本的な危険(火災・爆発など)のみ補償されるCタイプという3つに分類*されます。金額はAタイプ、Bタイプ、Cタイプの順に安価になりますが、その代わり補償される危険が少なくなるため、予算とのバランスでどのタイプが望ましいか選択いただくことになります。
*危険と保険条件例
・火災・爆発:ICC(A)、ICC(B)、ICC(C)でカバーされる
・地震・噴火:ICC(A)、ICC(B)でカバーされる
・盗難   :ICC(A)でカバーされる

ICCの種別に応じて補償される危険が異なってきますが、補償される場合の保険金額(保険会社が1回の保険事故で支払う保険の最高限度額)は同様です。通常はCIF価格(輸出時に相手国の港で荷揚げするまでの総費用)に110%を乗じた金額とされるケースが一般的なので、CIF価格が100万円の場合は110万円が補償される金額となります。

「外航貨物海上保険」というと一見難しそうに聞こえますが、大まかに3タイプが存在し、ほぼ全ての危険が補償されるものからそうでないものまで3段階に分かれるということと、最大補償金額はCIF価格の110%ということだけまずは理解して頂ければ、と思います。