中東紛争が物流にもたらす影響

テレビや新聞記事で中東における紛争に関するニュースを見たり聞かれたりされたことがある方も多いのではないかと思います。

イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実行支配するハマスとの間で昨年の後半以降戦闘が激化し、さらに最近ではイスラエルとイランの間でも緊張が高まっています。

日本からはかなり遠い国での出来事であるが故に、多くの方は実感がないと思いますが、実はこれらの紛争や緊張の高まりが、我々日本人の生活に大きく影響しているのです。

どういうことかと言いますと、欧州とアジアを結ぶ物流ルートは大きく分けて2つ存在し、紅海ルートと迂回ルートという2ルートが存在します。
(NHK報道資料:https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/wp-content/uploads/2024/02/02_01_26-7.jpgより)

紅海ルートは上記画像の赤いルートのことで、地中海を抜ける直前にイスラエルやイランの近くを通るルートとなります。

紛争がない状態では全く問題なくこのルートで物資を輸送することが可能である一方、昨今の中東紛争が激化しつつある状況では、このルートを採用することが非常に難しく、代わりに迂回ルート(希望峰の下を回るルート)を採用せざるを得ないケースが出てきます。

一見してわかる通り、紅海ルートに比べ迂回ルートはほぼ倍の距離となるため、迂回ルートを利用した際は、物流にかかる期間や金額がほぼ倍になってしまうという問題が発生してしまいます。

つまり、欧州から日本へ輸入する商品、日本から欧州へ輸出する商品の運送費が倍になり、かつ運送に要する期間も倍になってしまうということなのです。
それらの費用の増大はすなわち最終価格である私たちの購買価格に反映されると言えるため、その分物価の上昇が起きるということになります。

また、ここでもう1点深い問題として考えられるのが、運送期間が倍になってしまうという点です。現在、世界中でコンテナ不足が定常化していると言われていますが、この迂回ルートで運送されるコンテナが通常(紅海ルートで運送される場合)の倍の期間占有されてしまうということは、その他の地域で流通するコンテナ流量が減少するという帰結をもたらします。

つまり、欧州―日本だけの問題ではなく、世界中の物流コストが増大するということになり、世界各国でインフレがより一層加速する危険性を孕んでいると言えるでしょう。

このように、遠い世界で起こっている中東紛争ですが、実は普段の私たちの日常生活と密接に関わっているのです。

私たちにできることは限られているかもしれませんが、1日も早く紛争が終結し、物流が安定化することを祈念しています。