日本と外国の協定について

突然ですが、RCEPについて読者の皆さんはご存知でしょうか。RCEPは聞いたことがないという方もTPPという用語は聞かれたことはあるのではないでしょうか。TPPについで比較的認知度の高い用語で、経済連携協定に関するものといえば、EPAやFTAなどがあるかもしれません。

そしてそれらについて聞いたことがあるという方も、それぞれの違いを説明するとなるとかなり難しいのではないでしょうか。

今回のコラムでは、海外貿易に関わる上で避けては通れない、これらの協定についてご説明したいと思います。

まず、RCEPについてですが、英語ではRegional Comprehensive Economic Partnershipと言います。それぞれ先頭の頭文字をとってRCEPとなり、日本語ではアールセップと呼ばれます。正式名称をそのまま日本語に翻訳して、地域的な包括的経済連携協定とも言われています。

RCEPのポイントをまとめると以下のようになります。
・参加国:ASEAN 10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)および、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、日本の合計15カ国(2023年)
・総人口:22.7億人(2019年)
・総GDP:25.8兆ドル(2019年)
・貿易総額(輸出):5.5兆ドル

RCEPが評価されている点としては、関税撤廃率が80%〜100%と比較的高く、日本産品の工業製品(自動車部品や鉄鋼製品など)について14カ国全体で約92%の品目の関税撤廃を獲得できた点が挙げられます。また、その14カ国の中に中国と韓国が含まれている点について、この協定が日本にとって特に重要な意味を持つと言えるのではないでしょうか。

次に、TPPについて見てみましょう。英語では、Trans-Pacific Partnership Agreementと言います。それぞれ先頭の頭文字をとってTPPと略され、日本語ではティーピーピーと呼ばれます。正式名称をそのまま日本語に翻訳して、環太平洋パートナーシップ協定とも言われています。

Pacificや太平洋という言葉かも想像できる通り、この協定の参加国は太平洋に面している国となりますが、TPPのポイントをまとめると以下のようになります。

・参加国:ブルネイ、マレーシア、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、チリ、メキシコ、ペルー、シンガポール、および日本の合計11カ国(2023年)
・総人口:5.1億人(2019年)
・総GDP:11.8兆ドル(2019年)
・貿易総額(輸出):6.6兆ドル

当初TPPの参加国として米国も入っていたのですが、トランプ大統領が2017年に離脱を表明し、結果的に米国を除く11カ国間で署名され、発行されることとなりました。(その後、2021年頃からイギリスや中国、台湾、エクアドルなどが加入申請をしていますが、まだ加入には至っていません。)
TPPが評価されている点としては、米国が離脱後、日本が先頭となって自由貿易、国際貿易の経済圏を作り上げたことと言えるでしょう。

さて、次にEPAとFTAですが、実はこれらの用語はRCEPやTPPとは少し違います。RCEPやTPPが具体的な経済連携協定を意味するのに対し、EPAやFTAはその上の上位の概念を意味しているからです。

EPAはEconomic Partnership Agreement、FTAはFree Trade Agreementのそれぞれ頭文字をとったものですが、日本語ではそれぞれ経済連携協定、自由貿易協定と言われます。FTAが関税の撤廃などを目指す比較的狭義の概念である一方、EPAは関税の撤廃だけでなく投資や人の移動も自由化を目指す比較的広義の概念を表します。

物品を海外から輸入したり、海外へ輸出したりする際は、余分な関税を払うことを避けるためにも、その対象国と日本がどのような協定を結んでいるのかという点をあらかじめ調査することが重要と言えるでしょう。

また、例えば輸入を行う際は、その前の企画の段階で、各協定の加盟国を考慮にいれ、仕入れ元を非加盟国ではなく加盟国に変更するなどすれば、より実現度が高く、継続性のある事業を創出できるかもしれません。

弊社も貿易実務だけではなく、マクロ経済の観点から日本と諸外国がどのような協定を締結しどのような経済関係にあるのかという点について、日頃から情報を入手し、キャッチアップしていきたいと思います。