前回のコラムで、CFS(コンテナフレートステーション)について取り上げました。
CFSとは1つのコンテナに複数の貨物を混載するために貨物を積み込んだり、荷下ろしをしたりする場所、という説明をさせていただきました。
今回は保税という観点でさらに踏み込んで考察してみたいと思います。
このCFSという場所は、海外から送られてきた貨物が一時的に置かれる場所であり、いわゆる保税地域の一つとして分類されます。
税関を通過する前の段階では、海外から輸送されてきた貨物は全て外国貨物となり、「外国貨物は原則として、保税地域以外に置くことはできない」と関税法第30条で定められています。
つまり、逆に言えば、海外から輸送されてきた貨物について、関税がかからない状態では保税地域のみにしか置けない、ということです。
保税地域はその特徴からおおよそ下記のように分類されます。
- 指定保税地域:いわゆるコンテナヤード、1ヶ月以内の短期間のみ設置可能。
- 保税蔵置場:いわゆるコンテナフレートステーション、最大で2年程度と長期間にわたり設置可能であり、期間は場合に応じて延長可能。
- 保税工場:加工貿易のために設置される工場。最大で2年程度設置できる。海外から原材料を輸入し、関税がかからない状態で加工・製造できる場所として有効。
- 保税展示場:外国貨物を展示する場所。万博会場など。
- 総合保税地域:②〜④の機能を総合的に備えた場所。中部国際空港など。
(税関ホームページ:https://www.customs.go.jp/hozei/pdf-data/hozei_chiiki.pdfより)
①については財務大臣の指定が必要であり、②〜⑤については所轄の税関長が許可をするものと規定されています。
日々の生活に身近になりうる場所として、④保税展示場について詳しく説明したいと思います。
例えば、2025年に大阪万博が開催されますが、海外から多くの国と企業が参加する予定とされています。このような場合、企業の製品などを日本に輸送し、会場で一定期間展示する必要が出てきます。
(万博会場のイメージ図)
しかし、それら製品に対し、一つ一つ関税をかけることは現実的ではありません。
そこで、万博会場全体を保税地域として登録し、関税がかからないよう個別に対応する必要が出てくるのです。
実際に、昨年の2023年3月に大阪税関から許可を取得し、万博会場が保税展示場として認可される(期間は2023年4月から2026年4月まで)こととなりました。
(保税展示場許可書発行式の様子)
2025年の万博に行かれる方もこのコラムの読者の中にはいらっしゃるかもしれませんが、万博会場全体が保税地域である、という観点を考慮すると物流の制度や仕組みをより身近に感じていただけるのではないでしょうか。