前回のコラムで、BCP(事業継続計画)について少し触れましたが、今回のコラムではこのBCPについて踏み込んでご説明したいと思います。多くの方は耳慣れない言葉かもしれませんが、日本は地震の発生数が多いこともあり、いつ何時大規模な災害が発生してもおかしくありません。備えあれば憂いなし、と言いますが、災害発生時に平常時から備えておくという観点でも非常な重要なテーマと言えるのではないでしょうか。
そもそもBCPの定義について見てみると、中小企業庁のホームページでは「BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと」と説明されています。
簡単に要約すると、「緊急時に遭遇した際、通常のオペレーションをいち早く復旧させるために取るべき手段について事前に定められたもの」という内容になります。緊急事態が発生してからどのような行動を取るべきか考えているのでは初動が遅れ、さらなる二次被害がもたらされるか、また、運よくそのような被害が発生しないとしても通常業務への復帰が遅れる可能性が高くなると言えるでしょう。そのため、あくまでも緊急時を想定し、事前に(平常時に)手段を考案しておく必要があります。
少し抽象的な内容になってしまっていますが、例えば、どのような対策が考えられるのでしょうか。
まず、突然大きな自然災害が発生したことを想定してみましょう。その際、一番最初に気になるのは社員、従業員の身の安全ではないでしょうか。では、その安全を確実に確かめるにはどうすれば良いでしょうか。
もし、何も準備されたものが無ければ、一人ずつ携帯電話に電話をかけ、安否を確認することになってしまいますが、それでも社員リストおよび各社員の緊急時連絡先を事前に準備し、いつでもアクセスできるようにしておかなければなりません。そして、東日本大震災の時もそうでしたが、このような大規模な災害発生時は公共電波が繋がりにくくなることも想定され、上記方法はあまり良い手段と言えないかもしれません。
他にもいくつか方法がありますが、例えば、インターネット環境へのアクセスは比較的安定したインフラであるため、災害時でも繋がりやすい傾向にあります。そこで、あらかじめ特定アプリ内で社員全体がグループ(例えば、LINEアプリのグループやFacebookアプリのグループなど)を作成しておくのも一つの選択肢として有効かと思います。
もちろん、LINEやFacebookといったスマホアプリはプライベートで個人利用するアプリケーションでもあるため、安否確認に特化された専用のビジネス用アプリケーションを利用する、という方法も考えられます。京セラがサービス提供している「安否確認」やセコムが提供している「安否報告アプリ」といったスマホアプリはビジネス利用向けに開発されており、比較的安価なコストで導入することができます。
社員の安否確認というのは災害発生時の初動として非常に重要ですが、平常時にこそ、どのようなツールを使い、どのようなルールで運用するのか、しっかり調査し、策定しておく必要があると言えるでしょう。BCP(事業継続計画)と一言で言うと難しく思われがちですが、まだ計画をされていない事業者様は一度、災害が突発的に発生したことを想定してどのような行動をとれば良いか、まずは想像することから始めてみられてはいかがでしょうか。