海賊とコンテナ船

みなさんは”海賊”と聞いて何を思い浮かべられますでしょうか。多くの方の頭の中の海賊とは、ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウ(映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に出てくる主人公)のように、かなり昔に存在していたであろう野蛮な、それこそナイフや、鎖付きの巨大な鉄製の玉をブンブン振り回しているような人たちではないでしょうか。「21世紀のこの時代にもう海賊なんていないのでは」というのが大方の人の意見だと思います。

ところが、実は海賊はこれだけ科学技術が発達した現代にも存在しているのです。年々海賊による襲撃件数は減少傾向にあるものの、東南アジア地域だけでも2017年の1年で年間80件程度発生しています。しかもこれら襲撃事件のうちハイジャックされる事件が毎年5件程度発生していることを考えると、何とも驚きを隠せません。空を飛ぶ飛行機がハイジャックされた日には世界中を駆け巡るほど大きなニュースになるのですが、船舶のハイジャックが余り大きなニュースにならないと感じるのは私だけでしょうか。

ただ、船舶のハイジャックがそれほど大きなニュースにならないのは、通常狙われる船舶の規模が比較的小さく、当社が普段取り扱っているコンテナを運んでいる船舶(いわゆるコンテナ船)のような巨大な船が襲撃されることがないからだと思われます。特にコンテナ船は、通常時速40-50kmという比較的早い速度で航行することが多く、かつ水面から甲板までの高さが高いため、海賊も乗り入れることができないのです。

ところが、以前記事にも書いた通り、現代のコンテナ船が巨大化するにしたがって、その航行速度が低下し、かつ数多くのコンテナを積載するために甲板自体が水面に近くなる傾向にあります。そしてこのようなコンテナ船を狙って襲撃される事件がたまにではありますが、発生してしまいます。トム・ハンクス主演で映画化もされた『キャプテン・フィリップス』という映画では、実際に2009年に発生したコンテナ船のハイジャック事件がテーマになっていました。

自然の脅威だけでなく、人災とも言える海賊の脅威にも備える必要があることを考えると海外からモノが届くということ自体、奇跡に近いのかもしれません。海外で生産されたコーヒーが日本で飲めるのも、普段私たちは意識することがありませんが、長い年月をかけて築き上げられてきた安全が土台になっていることを考えると、目の前のコーヒーが何ともありがたく思えてしまう今日この頃です。