アメリカと中国の貿易戦争が勃発してから早1年以上が経ちましたが、またここに来て新たな動きがありました。物流業界に携わっておられるために、この貿易戦争について直近の動きも取り上げながらご説明したいと思います。
アメリカのトランプ大統領が8月1日(アメリカ時間)に発表したところによると、2019年9月1日より、中国からの輸入品に追加関税(3000億ドル分の輸入品に10%の関税をかけるというもの)を課すとしています。
(ご参考URL:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190802/k10012018321000.html)1ドル100円換算として30兆円分の輸入品に10%の関税をかけるということなのですが、今までの関税措置も合わせると、アメリカが中国から輸入するほぼ全てに品目について関税がかけられたということになり、とうとう米中の関税戦争も最終的なフェーズまで到達してしまったと言えるのではないでしょうか。
今までにアメリカが中国に課した関税措置について順を追って見て行くと、2018年7月の第一弾(ロボットなどの約800品目、340億ドル相当に関税25%)、2018年8月の第二弾(半導体などの約300品目、160億ドル相当に関税25%)、2018年9月の第三弾(家電・家具などの約5700品目、2000億ドル相当に関税10%)に続き、今回の措置が約一年ぶりの第四弾ということになります。
第三弾の措置が取られてからというもの、約1年に渡りアメリカと中国は交渉を続けて参りましたが、中国の動きが遅いことにトランプ大統領がついに痺れを切らした形となってしまい、ついに4枚目のカードを切られてしまうこととなりました。今回の措置で関税の対象をほぼ全品目としたことは、この4枚目のカードがトランプゲームで言う所のジョーカーのようなカードであるということを意味しています。つまり、カードを何回も切る中で、中国側もアメリカ側も残されたカードがほぼ無くなってしまったと言えるでしょう。
そもそも、アメリカが中国から輸入している貿易額は中国がアメリカから輸入しているより貿易額も圧倒的に大きいため、輸入品目に関税を課すという勝負では中国よりもアメリカの方が手持ちの札が多く、有利な立ち位置にいるのです。そのため、この米中貿易戦争は常にアメリカが主導する形で報復措置が取られていました。そして、輸入品目に関税を課すという土俵でこの米中間の争いが決着しなかった場合、その争いの場が別の場に移らないとも限りません。今後も目が離せない状況はしばらく続くと思われますが、アメリカと中国は両国とも日本にとって重要な貿易相手国であることを考えると、この争いを対岸の火事と捉えることなく、我々日本企業が生き延びるためにどのような施策を今の内から講じるべきか、考える必要があるかもしれません。