物流業界における外資規制

先日、非常に興味深いニュース(7月17日付日本経済新聞 電子版)が飛び込んできましたので、ご紹介したいと思います。それは、アメリカの投資ファンド運用会社、ブラックストーン・グループが1,000億円を投じて日本の物流施設を取得する、というものでした。(ご参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47386030W9A710C1MM8000/

この物流施設というのは主に倉庫を意味しますが、Amazonなどの大手ECサービスが利用する、神奈川県小田原市や千葉県印西市の物件なども含まれるとのこと、外資企業が日本の物流の要とされる倉庫業に進出する流れは今後も続くものと思われます。

このニュースが特段興味深いのは、土地取得などに関する不動産業について外国人に対する規制が日本には無いに等しく、物流施設の取得なども外国資本はほぼ自由にできるという点です。戦前は外国人土地法なる法律が存在し、一定の規制が存在していたのですが、太平洋戦争終結とともにこの法律は廃止され、土地取得に関して外国人に対する規制は現在に到るまで存在していません。

一方、運送事業に関して外国人に対する規制が存在するかというと現在も存在しており、基本的に外国人および外国法人は日本国内において運送事業を営むことができない、とされています。

そもそも、運送事業を営む事業者は貨物利用運送事業法という法律に基づき、各種事業の登録や許可を受けることとなりますが、当社も例外ではなく、第一種貨物利用運送事業の登録を受けています。
(注:法律上、貨物利用運送事業は2種類に分類されますが、第一種貨物利用運送事業は物流ルートの一部の運送手段を手配する運送事業、第二種貨物利用運送事業は物流ルートのすべて(出発地から最終着地までの全ルート)の運送手段を手配する運送事業という違いがあります。)

そして、この第一種貨物利用運送事業、第二種貨物利用運送事業ともに外国人および外国法人が登録または許可を受けることはできないとされているのです。

外国人や外国法人に対する規制を設けるべきか設けるべきでないか、という議論にはそれぞれにメリット(国内産業を保護できる等)・デメリット(企業間の健全な競争が阻害される等)が存在するためこのコラムでは踏み込むことは避けたいと思いますが、物流業界全体として俯瞰した際に一貫性を考慮することも必要ではないでしょうか。

少なくとも、倉庫事業に対して外資規制がない一方で、運送事業に対する外資規制が厳しいという現状はまるで相反する状況であり、政策に首尾一貫性がないようにも見受けられます。なかなか政策上議論にならないテーマではありますが、物流業界に携わる方は、このような視点で日々のニュースに着目してみると面白い発見があるかもしれません。