先日の記事にて、世界の港湾別に海上コンテナの取扱量を取り上げました。その中では、近年はアジア諸国が台頭してきており、上海や深圳(シンセン)といった中国の港湾、それからシンガポールの港湾が上位を占めていること、そして、20〜30年前は欧米の港湾が上位を占めていたことを考えると時代の流れととともに21世紀はアジアの時代になりつつあるということについて説明させて頂きました。
では、実際にコンテナを運んでいる輸送業者の世界ランキングはどのようになっているか皆さんご存知でしょうか。
日本発の海上コンテナの輸送会社としては商船三井や日本郵船といった会社が有名ですが、実は世界ランキングの中ではTOP10に入るか入らないかというギリギリの線上に位置しています。
会社というカテゴリーで見てみるとまだまだ欧米の会社が上位を占めており、船舶数、コンテナ輸送数ともに上位からデンマークのマースクライン社、スイスのメディテラニアン・シッピング・カンパニー社、フランスのCMA-CGM社となっています。
このいずれも、日本でNo.1の商船三井の4倍〜5倍程度の船舶を保有しており、輸送数の同じく4倍〜5倍もの開きがあります。
そうなのです。もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にコンテナが輸送される港湾別でみるとアジア諸国が台頭してきているのですが、実際に運送している企業という観点でみると、欧米諸国が根強く世界の物流を押さえているということが言えるのです。
経済の成長にはそれぞれの人口動態が大きく影響していることは否めず、コンテナが取り扱われる国々もその人口動態に合わせ欧米からアジアに移り変わるということは想像に難くありません。
しかしながら、特に1位のマースクライン社などは2000年代に入ってから積極的なM&Aによって規模を急拡大させることに成功しました。よく“失われた20年”と言いますが、日本がバブル崩壊後約20年間に渡って経済の低迷に喘いでいる間にも、欧米の企業はしたたかに世界戦略を練り、少しずつ規模を拡大してきたと言えるでしょう。
少し極端な言い方になってしまうかもしれませんが、経済の生命線とも言える物流を押さえることができれば世界経済も押さえることができると言っても過言ではありません。世界の中で日本という国のプレゼンスを高めるためにも、近視眼的な政策論議だけでなく、中長期的な目線で日本の物流業界を育む政策が好景気の今こそ求められているのかもしれません。