海上コンテナ輸送における
コンテナ不足について

先日のコラムでは、コロナワクチンを輸送する際に、物流がどのように関係しているか、影響を及ぼすかを考察しましたが、今回のコラムでは、コロナ禍が海上コンテナ輸送にどのような影響を及ぼしているか、少し的を絞りつつ、マクロ的な視点でご説明したいと思います。

実のところ、2020年の秋(特に2020年11月)以降、世界的にコンテナが不足している、という状況が続いています。正確には、コンテナの流動性が低下し、コンテナが滞留している地域と不足している地域に顕著に分かれつつある、という状況が発生しています。

今までのコラムでも何回かご説明してまいりましたが、海上コンテナはA地点→B地点というように一方通行で移動しているわけではなく、A地点→B地点→A地点、またはA地点→B地点→C地点→A地点というように、様々な地点を廻り、輸送されることとなります。そのため、流動性が常に高く保たれていれば、問題なく物流網が機能するのですが、例えば、上記例において、B地点で長時間滞留したとすると、そこからの行先(いわゆる仕向地)である、A地点やC地点でコンテナが不足する、という状況が発生します。

JETROの報告によれば、アメリカにおいて、中国からの輸入が増加する一方、米国から諸外国向けの輸出がコロナ禍の影響で滞り、結果、アメリカにコンテナが滞留している、という現象が見られるようです。その結果、アメリカ以外の諸外国では、コンテナが自国に入ってこないため、慢性的なコンテナ不足に陥ってしまっている、と言えるでしょう。

このようなコンテナ不足がどのような影響を及ぼすかですが、大きな影響としてはコンテナ運賃が高騰するという問題が発生してしまいます。価格は一般に、需要と供給のバランスで決定され、需要が供給に比べ多くなれば価格は高騰しますし、供給が需要に比べ多くなれば価格は低下します。コンテナが不足する、ということはコンテナの需要が供給に比べ多くなるということを意味しますから、結果、コンテナ運賃が上昇してしまうのです。

特に、直近の事例をご紹介すると、フィリピンでは海上コンテナの輸送費は従来の2倍〜4倍に、マレーシアにおいては3倍程度に高騰してしまっているという報告もあります。この輸送費の上昇分がそのまま最終製品の売価に反映されるとすると、たとえば、日本国内で手に入る海外からの輸入品の価格もその分上昇するということとなります。嗜好品などであれば、日々の暮らしにまだそれほど影響はないかもしれませんが、日用品が上昇してしまうと私たちの暮らしに直接的に影響が出てしまいます。

物流網が健全に問題なく機能している以上は特に問題が顕在化しませんが、現在の状況のように少しでも物流網に綻びが発生した場合にその影響が大きく伝播してしまう、というのは国際物流が発達した現代ならではの問題かもしれません。ただ、先日も取り上げたコロナワクチンの普及で、イスラエルをはじめとし、海外では接種後の陽性率が大幅に低下したという前向きな情報も発表されています。一刻も早く世界が平常運転に戻る日を心待ちにしつつ、日々の業務に励みたいと思います。