コロナワクチンと物流

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年より広がる新型コロナウイルスですが、年始になって感染者数が増え続けています。事業者のみなさまにおかれましては、感染防止策をしっかりと取って頂き、必要に応じて事業継続計画(BCP)も策定して頂きながら、日々の事業運営を着実にこなして頂ければと思います。
当社も日本のインフラを継続的に支えるため、今年も誠心誠意、邁進したいと思います。

さて、最近は暗いニュースが多く流れていますが、そんな中でもいくつか希望が持てるニュースも飛び込んできています。多くの方はニュースで聞かれたことがあるかもしれませんが、アメリカの製薬会社数社を筆頭に、ワクチン開発が成功したとの情報が公開されました。本日のコラムでは、このワクチンと物流がどのように関係してくるのか、少し掘り下げてみたいと思います。

ワクチンが開発された、ということは十分喜ばしいニュースではあるのですが、実は、これだけでは手放しで喜べません。日本国民一人ひとりに着実に行き渡って初めて、コロナを押さえ込むことができて初めて、ワクチン開発は成功したと言えるでしょう。

実はこのコロナワクチンですが、通常の一般的なワクチンとは少々異なり、mRNAワクチンといわれるものになります。簡単に特徴をまとめると、通常のワクチンは壊れにくい一方で、mRNAワクチンは非常に壊れやすいという特徴を持っています。特に、最近話題となっている2つのワクチン、アメリカのファイザー社製ワクチンはマイナス75度(プラスマイナス15度)で保管される必要があり、また、モデルナ社製ワクチンはマイナス20度(プラスマイナス5度)で保管される必要がある、とされています。冷蔵・冷凍設備の整っていない場所で保管されるとその構造が壊れ、ワクチンとしての機能が発揮されないのです。

ここで、物流という観点で問題になるのが、そのようなワクチンをどのように日本全国に運ぶのか、という問題です。そこで、ファイザー製のワクチンを例にとり、現在考えられている輸送方法をご紹介してみたいと思います。まず、海外の工場で生産されたワクチンが空輸で日本に運ばれた後、武田薬品工業の倉庫に保管されます。そこから、特殊コンテナで各地域の卸倉庫に輸送されたのち、一般車でも車載可能なディープフリーザー等に移し替えられ、全国の医療機関(接種会場)に運ばれると計画されています。

上記でお気づきになられた方もいらっしゃると思いますが、ここで必要不可欠なのが特殊コンテナ、いわゆる冷蔵冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)といわれるコンテナです。コンテナ内部に冷蔵・冷凍装置を備えているため、生鮮食品など輸送時に冷蔵・冷凍される必要があるものを運ぶことができるという特徴を持っています。
*以前、【物流起訴用語解説】海上コンテナとは〜大きさや種類について解説〜というコラム(【物流基礎用語解説】海上コンテナとは)でご紹介しましたが、一般的なコンテナはドライコンテナ、ドライコンテナ以外の特殊な用途で利用するコンテナは特殊コンテナと分類され、さらに特殊コンテナは冷蔵冷凍コンテナやオープントップコンテナなどに分類されます。リンク先の記事も適宜ご参照下さい。

コロナワクチンが日本に輸入された後、全国各地にワクチンを輸送するため、冷蔵冷凍コンテナが日本各地を移動することとなり、このコンテナ無くしてコロナウイルスの封じ込めなどは実現できない、と言っても過言ではないでしょう。物流業界は日本のインフラを支える業界であり、日本経済の屋台骨である、という自負を我々は普段から持っていますが、このように考えると、経済の屋台骨というだけではなく、医療インフラの屋台骨である、というようにも言えるのではないでしょうか。
日本を支えるという自負を持ち、誠実かつ具体的なご提案ができる物流会社として、今年も着実に歩んでいきたいと思います。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。